CaRP(Care giver's Research Project)とは
こんにちは。栗延です。
自己紹介のところにも書きましたが,私は大学を卒業後,都内の特別養護老人ホームで,介護職員として働いていました。
実は,大学時代は数学を専攻しており,介護なんて全く興味がなかったんですが,教職課程の介護等体験で介護に興味を持ち,それを仕事に選んでしまいました。
ヘルパー2級を取得して,右も左もわからぬまま介護の世界に飛び込み,多くの利用者の方に出会い,そして多くのことを学ばせてもらいました。
少し,思い出話をさせてください。
まず僕は,ヘルパー2級の取得からはじめました。
テキストには,医学的なこと,介助に必要な技術の事など様々なことが書いてあります。
その著作者を見ると,医者や看護師,理学療法士,作業療法士,栄養士,法律家が並んでおり,「介護福祉士」の肩書を持つ人がいませんでした。
無事に,ヘルパー2級を取得し,僕は特養で仕事をするようになります。
その特養は特に要介護度が高い人が多かったので,利用者の半分くらいは,認知症が重篤化して寝たきりとなり,声をかけたり触ったりしても,言葉が出たり行動で反応したりということが見られない方でした。
そのような人の介護をしながら,
「この人は普段,何を考えながら生きているんだろう。」
「居室で音楽を流しているけど,聴こえているのかな。」
「一応,介助する時には声掛けするけど,意味があるんだろうか。」
という疑問が強くなってきました。
そこで,本や論文なんかを自分なりにいろいろ検索してみたんですが,そのような疑問に答えてくれるようなものは見つかりませんでした。
このような事例は,たくさんあります。
普段介護をやりながら,「これはどうなんだろう」と思って調べてみても,
なかなか答えにたどり着けない。
「文字情報は比較的すぐ理解してもらえるように感じるけど,本当にそうなのか」
「認知症が重篤でも,新たに歩行器を使うことを学習したりすることはできるんだ。他の人もそうなのかな。」
介護福祉士の専門性は,「利用者の生活をより良い方向へ変化させるために,根拠に基づいた介護の実践とともに環境を整備することができること」といわれます(日本介護福祉士会 介護福祉士の専門性 http://www.jaccw.or.jp/fukushishi/senmon.php)。
では,その根拠とは何でしょうか。
それは,医学などの領域から得られた知見なのでしょうか。
介護の目的は「Cure」ではなく「Care」です。
介護福祉士の専門性の言葉を借りれば,
「利用者の生活をより良い方向へ変化させる」ことが目的であり,
「利用者の身体症状をより良い方向へ変化させる」ことが目的ではありません。
そして,この目的のための介護実践が基づく根拠を増やしていくことが,
介護福祉士の専門性を高めることにつながります。
それでは,その実践が基づく根拠は,
だれが増やしてくれるんでしょうか。
たしかに他の領域の人も根拠を提供してくれるかもしれません。
しかし,現場の人ではないと気が付かない疑問,実践などが数多くあります。
介護の質,介護職の専門性,介護職の地位を上げるためには,
介護職の人が研究を行わなければなりません。
介護職じゃないとできない研究がたくさんあります。
CaRPは,介護に関わる人たちが,各自が研究テーマを持って,
お互いに研究を支え合おうという集まりです。
「いままで研究なんかやったことないよ」
「そもそも研究って何?」
という人が集まって,お互いにアドバイスをしながら,
学会や論文を書くことを見据えて支え合っています。
もともと僕が笑福研究会でやっていたことをもとにして,
大分市の一部地域でこじんまりとやっていますが,
全国の介護職に広がるようなムーブメントになればと願っています。